代償運動から考える、脊柱管狭窄症における間欠性跛行の発症要因
【脊柱管狭窄症の病態】
主に腰椎椎間関節への伸展ストレスまたは
回旋ストレスにより、
脊柱管、あるいは椎間孔が狭くなり、
神経根が圧迫される症状。
※見逃されやすいのが、回旋ストレスによる神経根の圧迫!
じゃあなんで上記の様な病態になってしまうの!?
↓
【脊柱管狭窄症の発症要因】
発症要因は、噛み砕いて言うとズバリ
腰椎の過前弯による、椎間関節への伸展ストレス障害です!
その前に、大切な考え方として・・・
痛みや痺れを伴う症状に対し(怪我・外傷を除く)
臨床上自分が大事にしている考え方があります。それは
代償運動による他部位へのストレス増加
つまりある部位における関節可動域制限により、他関節に過可動性が生じてしまう。
→過可動性による力学的ストレスの蓄積
→痛みや痺れの大きな原因
といった流れになります!
大前提として、ある一つの動作を遂行する際、一つの関節しか機能しない訳ではありません。
必ず身体全体の各関節が機能し、目的となる動作を遂行しています。
例えば身体を後ろに反らす動作を例に挙げると、体幹の伸展だけでなく、
頸部の伸展、胸郭の拡張、股関節の伸展、
ひいては膝関節が軽度屈曲し、
足関節は背屈位となっているはず。
つまり動作というのは身体全体を使って行っている!
この時、何処かしらの関節にエラーが生じると、他の関節が過剰に動くことによって、身体全体の可動域を保とうとします。
(例えば頚部の伸展可動域に制限が生じれば、その制限を補う為に腰椎が過伸展し、腰痛を引き起こす)
脊柱管狭窄症の場合、他関節のエラー・可動域制限により、腰椎の過前弯・過伸展を引き起こし、椎間関節にストレスを与えている場合が非常に多いということです!
腰椎そのものを診ることも大事ですが、なぜ腰椎へストレスがかかっているのか!?そこを考えていきましょう!
【他関節による腰椎前弯への影響】
①股関節
股関節に関しては、屈曲拘縮がキーポイントになります。
とりあえず屈曲拘縮から腰椎へ影響を及ぼすことを覚えておきましょう!
股関節屈曲拘縮(伸展制限)が残存したまま直立姿勢を取ろうとすると、※股関節を伸展させて立位を保持できないので・・・
→骨盤前傾、腰椎過前弯による代償によって、直立姿勢を保とうとします。
(※ここでの股関節伸展というのは、骨盤の前傾を伴わない、純粋な股関節の伸展=寛骨大腿関節での伸展可動域です!)
これが腰椎椎間関節への伸展ストレスを助長させてしまうんですね!
②頸部、胸郭
繰り返しますが、大前提としてある目的とする動作を遂行する場合、各関節が柔軟に動くことが必要です。
頸部は大きな伸展可動性を有していますので、その可動性にエラーが起こることにより、腰椎の過可動性が引き起こされ、伸展ストレスを与える事になります。
また、胸郭の拡張制限(胸を張るような動作)があると、胸椎の伸展可動域がしっかり確保できない為、腰椎の代償運動が引き起こされやすくなります。
胸郭の拡張制限
→胸椎後弯位、肩甲骨外転位
となっていることが多いので、しっかり関連する筋群にアプローチしていきましょう!
以下、頸部伸展に対し、アプローチすべき筋群
↓
・斜角筋
・胸鎖乳突筋のリリース
胸郭の拡張制限に対し、アプローチすべき筋群
↓
・小胸筋
・前鋸筋のリリース
・胸棘筋
・肩甲骨内転筋 の活性化、促通
③スウェイバック姿勢
胸椎後弯、骨盤前方偏移の姿勢。
この姿勢も腰椎椎間関節に伸展ストレスを生じさせる大きな原因です。
胸椎後弯により重心が後方となり、支点は前方偏移している骨盤となります。
ポイントは胸椎後弯部位から、前方偏移している骨盤までの距離!
この距離が長ければ長いほど(骨盤前方偏移が著明であるほど)腰椎への伸展モーメントが強く働き、椎間関節へ大きなストレスを与えることになります。
【代表的な間欠性跛行発症要因と治療ポイント】
その前に・・・間欠性跛行とは?
よく言われるのが
歩いていると痛みや痺れ症状が出現し、
休むと痛みや痺れが消失する、
ということですが、
歩行時に生じる椎間関節障害(腰椎前弯増強)
と捉えてください。
以下、具体的な間欠性跛行発症要因の紹介です!
①股関節伸展制限
そもそも歩行というのは、
足を前に出す動作の連続・・・というよりは、
「足を後ろに蹴り出す動作の連続」
で成り立っています。
そのため、足を蹴り出す動作の構築が大変重要になってきます。
足を後ろに蹴り出す→つまり立脚後期の時、
股関節は最大伸展位となります。
股関節伸展の際に重要なのが、股関節屈筋群の柔軟性です。
上記項目でも記載しましたが、股関節屈筋群のタイトネスにより、
股関節(寛骨大腿関節)の伸展制限
→骨盤前傾による代償
→腰椎前弯増強
といったメカニズムが構築されます。
繰り返す異常歩行→椎間関節へのストレス蓄積により、症状が出現しやすくなりますので要注意です!
以下、骨盤前傾を助長させる代表的な筋群です。
↓
・大腰筋
・腸骨筋
これらの筋の柔軟性を獲得することにより、股関節の伸展可動域向上に繋がります!
合わせて股関節伸展の際、
外転に制限があるようなら内転筋群のリリース
内転に制限があるようなら
大腿筋膜張筋のリリースによって
より効果的に伸展可動域を獲得することができます!
②足関節背屈制限、足趾MP関節伸展制限
「歩行というのは足を後ろに蹴り出す動作が重要」
というのは前述した通りです。
じゃあ足を後ろに蹴り出す動作というのは、股関節の伸展だけで成り立っているか?
というと、その他にも・・・
足関節の背屈・足趾の伸展の可動域
がとても重要になってきます。
歩行の際、足関節・足趾を使って十分蹴り出しを行うことで、その余力・反動によって下肢を前方に振り出しています。
その為、立脚後期から遊脚相において
腸腰筋にそこまでの筋出力は求められていません。
しかし立脚後期に十分な足関節と足趾MP関節の可動域が獲得されていないと、
蹴り出しが十分に行われない為、
極端に表現すると
下肢を持ち上げて前に出す、というような歩行が行われることになります。
この時、腸腰筋の過活動が生じ
腰椎前弯の助長→椎間関節へのストレス増大
といったメカニズムが構築されます!
・足関節背屈制限
→下腿三頭筋リリース
・足趾MP関節伸展制限
→長趾屈筋、長母趾屈筋のリリース
で柔軟性を獲得しましょう!
また足趾の蹴り出しには柔軟性の他
足部内在筋の機能活性化も重要ですので、合わせて行いましょう!
③後方重心での歩行
こちらも前述した通り。
胸椎後弯、骨盤前方偏移のスウェイバック姿勢が特徴的です。
骨盤前方偏移では、股関節外旋位を取っている症例が非常に多く、
いわゆる仙骨のうなづき運動=ニューテーション
が起こっている状態で固まってしまっています。
その為スウェイバック姿勢を改善していく為には、
・しっかりと胸椎の伸展を作る
・臀部後面、股関節外旋筋を緩める
これらのアプローチにより、腰椎にかかる負担は軽減していきます(^^)